――水不足に備える4つのポイント
6月27日、気象庁は九州・中国・四国・近畿の梅雨明けを発表しました。平年より約3週間早く、統計開始(1951年)以来の最速記録です。梅雨期間中の降水量も平年を大きく下回り、「二重の渇水リスク」が指摘されています。
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1.“22日早い”梅雨明けが意味するもの
- 水源リザーブの不足
例年は7月下旬までにダムやため池が満水となり、8月中旬までの潅水に余裕が生まれます。今年はその貯水猶予が約3週間短縮される計算です。 - 梅雨期間の雨量も少ない
梅雨自体が短く、降水量も平年比6〜7割程度にとどまっています。結果として取水制限の発令が早まる恐れがあります。
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2.田植え後〜盆明けまでの水量をシミュレーションする
指標 | 目安 | 90 ha規模ほ場の日量例 |
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日蒸発散浸透量 | 10〜15 mm/日(盛夏) | 9,000〜13,500 m³/日 |
推奨湛水深 | 5 cm(幼穂形成期まで) | 45,000 m³を常時保持 |
用水余裕率 | 120 %確保が理想 | 10,800〜16,200 m³/日 |
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診断ステップ
- ほ場ごとの最大取水量を把握し、上表の「必要量」と比較
- 不足分をポンプ揚水・ため池融通で補えるか検討
- 二番穂を伸ばす予定なら、ピーク需要をさらに10 %上乗せ
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3.用水路&ため池・ダムの“水管理チェックリスト”
チェック項目 | すぐできるアクション |
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取水口・分水口の漏水 | ゴムパッキン・止水板で即時補修 |
ため池の貯水率 | 週間で推移を可視化し、70 %を切ったらポンプ計画を起動 |
用排水ゲートの操作履歴 | 操作簿とセンサー値を突合し無駄放流を洗い出す |
土壌水分センサー | 低コストIoT計測器を導入し深水管理を遠隔監視 |
用水路の草刈り | 取水能力が実測10 %向上。労力対効果◎ |
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4.高温障害を抑える遮水・深水管理
- 深水(7〜10 cm)管理で水温を下げる
水深が深いほど夜間に冷え、稲体温上昇を抑制できます。 - 夜間間断潅水(落水→夜間取水)で日中の水温上昇を回避
気温35 ℃超が予想される日は夕方から取水し、翌朝まで保持。 - シリカ資材・ケイ酸カリの追肥
登熟期前の葉面散布で白濁米率を抑制した試験例あり。 - 遮光ネットはコメでも有効
透光率70 %ネットで登熟温度が約2 ℃下がり、1等米比率が改善した報告があります。
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まとめ 〜「早い梅雨明けは“水のPDCA”で乗り切る」
今年は “雨量の不足”と“梅雨明けの早さ”による『雨と時間のダブル不足』が強く懸念されています。
逆境をチャンスに変えるカギは ①水量の見える化 → ②深水・遮水で高温回避 → ③早めの設備・資材投資の検討 の3段階PDCA。
- 水量の見える化:15 mm/日を基準に日次シートを作成
- 深水・遮水:水温=稲体温と捉えて温度管理
- 設備投資の検討:IoT計測器や遮光ネットを計画的に導入し、翌年以降も使える仕組みへ
取水口の水漏れ一本、センサー一台の差が「白濁米か1等米か」を分ける年になりそうです。早めの対策で、酷暑の夏を乗り切りましょう。